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2008年5月23日 (金)

聖華。 遅くなって申し訳・・・!

「とにかく片付けましょう。何かあってからでは遅いですし」

ヴィネアが言う。
今のところ、町には被害はでていないようである。町の人々も、皆家の中で息を潜めているように見えた。
しかし、それもいつ何があるがわからない。
3人は顔を見合わせ頷くと、地面を蹴った。

「お、おい!」
「おじさんはそこで見ていて!メディちゃんをよろしく!」

ルークが叫びながら銃を構える。
カディルは己の娘を抱きしめた。
彼らは何も言わないが、今の自分に闘うだけの力はもうほとんど残っていない。
おそらく、自分と娘の身を守るだけでも精一杯だろう。
娘を伴い、彼らの邪魔にならないように移動する。悔しいが、彼らに任せるしかない。
腕の中にいる小さな身体がぎゅっとしがみついてきた。その存在を確かめるように、抱く腕に力をこめた。

「もうだいぶ片付いたかな!?」
「こっちの裏にいたやつは片付けた。しかし、きりがないな」

町の中心にある広場に、3人は集まっていた。

「建物の裏にまで回るのはめんどうですね」
「ねー」

突然の乱入者達に驚いたのか、魔物達が騒ぎ出す。
その様子を横目で見ながら、ディアスが思案するそぶりをみせた。

「・・・ヴィネア。やつらを一ヶ所に集められるか?」

ヴィネアがディアスを振り返る。
目が合っただけで彼の意図を察したのだろう、顔を前に戻した。

「少し、時間がかかりますが・・・」
「構わないさ。ルーク、適当に足止めだ」
「オッケー!」

2人はヴィネアを挟んで対になるように場所を変える。ヴィネアが目を閉じ、両腕を下ろし掌を軽く上に向けた。
彼らのそんな行動が自分達に危害を加えると思ったのだろう、近くにいた魔物が襲ってくる。
それらを軽く始末しながら、2人はヴィネアを待った。
3人の目的は、この町にいる魔物達を一ヶ所に集めてしまうことだ。そうすれば退治るのにかかる時間も労力も大幅に削ることができる。その為にヴィネアが魔物の気配をとらえていっているのだ。
3人の中で一番魔力が強いのはヴィネアだ。ルークやディアスも一般的に見れば軽く強い部類に入るが、ヴィネアはそれ以上である。それに、最も広範囲魔法が得意であるのも彼女なのだ。

「・・・捉えた」

ヴィネアの長い髪が大きくうねる。掌を外に向け、両腕を大きく横に広げる。
魔物を淡い光が取り囲み、体がふわりと浮き上がった。横に伸ばした腕を半円を描くようにして頭上へと伸ばす。それにあわせるように町のあちこちから魔物が宙を移動し、彼らの頭上に集まってきた。
一ヶ所に団子のように集められ蠢く様は不気味である。

「ヴィネア、そのままいけるか?」

魔物の塊を宙に固定し、閉じていた目を開けたヴィネアが薄く笑った。

「誰に言ってるんですか?」

その笑みを受け、ディアスとルークも不敵に笑う。
再び瞳を閉じたヴィネアを見ながら、ルークが口を開いた。

「僕の銃じゃあの大きさを一気に消すことはできないしね。でもディアスもできるでしょ?」
「俺は剣使いだからな。あれは本分じゃあない」

剣を鞘にしまうと、詠唱を終えたヴィネアを見やる。ヴィネアが静かに目と口を開いた。

「・・・いけしゃあしゃあと、よくも言えますね」

睨んできた横目に対して、ディアスはにへらと笑う。ヴィネアは軽く溜息をつくと、上空を見上げた。

「ヴィオルーセ・・・!」

右手をさっと横に動かす。ヴィネアの足元に魔法陣が生じ、輝きを強める。
黒とも白とも言えぬ光線がそこから飛び出した。

『ガアァ!!』

光線はまっすぐに魔物の塊に向かう。
そしてそのまま消し飛んだ。

「本っ当にありがとう。この町を代表して礼を言うよ」

町長カディル宅にて、3人は町長直々に手厚い歓迎を受けていた。
目の前には食事が並んでおり、ルークの希望通り、お菓子もある。

「いや、何もここまで・・・」

ディアスが遠慮がちに言うがそんなことでカディルの気がおさまるわけがない。
それを彼の表情から読んだのだろう、ディアスが苦笑した。

「では、お言葉に甘えて・・・」
「いっただっきまーす!」

待ってましたと言わんばかりにルークが真っ先に食べ始める。それにならい、ヴィネアとディアスも手を伸ばした。

「うん、おいしい!」

元々、貰っても損がなければもらっておけ、という思考を3人が3人とも持っている。
それに、考えてみればこの町に着いてから何も食べていなかったのだ。断る理由はない。

「うわ~、思っていた以上においしいっ。ほっぺが落ちそう!」

ルークがお菓子を口にし、感激したように叫ぶ。その反応をみてカディルは満足そうに笑った。
と、ディアスが持っていたグラスを置き、口を開いた。

「ところで、何故あんなに魔物が増えたんだ?」

魔物自体は色々な所に生息しており、群れを組むものとそうでないものがいる。だが、あのような状態になるのは珍しい。
カディルは表情を曇らせた。

「それが・・・私達にもよくわからないのだ。以前まではそんなに見るものでもなかったんだが・・・。ある日、一匹二匹と増えたかと思えばあのようなことに・・・」

それをきき、ディアスはふむ、と考え込んだ。偶然なのかそうでないのか。もし、たまたま住み着いただけなのならいいのだが・・・。だが、無事に終わったことを悩んでも仕方がないと思ったのか、考えるのをやめ、顔をあげた。それを見て、カディルはほっとしたような顔をし、そして笑顔を浮かべた。

「さあ、ゆっくりと休息していってほしい。何しろ君達はこの町を救ってくれたのだから」

翌朝。
結局、町長宅に一拍した3人は大勢の町の人に見送られながら町を出た。

「・・・何かやりにくいですね」
「ああ。・・・というか、しばらく菓子類は勘弁・・・・・・」

ディアスが言うと、ヴィネアはげんなりとした。

「え~!?何で?」
「何でって、あのな・・・」

ルークは飽きることなく腹が満たされるまで甘いものを食べ続けていたのだ。それに加え、甘ったるい香りが始終周囲に漂っていた。しばらくケーキをみただけでも胸焼けがしそうである。

「・・・そういえばディアス。昨夜女性とお話していたみたいですが・・・?」
「えっ・・・あ、ああ。あれは誘われたんだ」

整った顔立ちに優しい雰囲気を持つディアスだ。彼に惹かれる女性は少なくない。
もっとも、本人は色恋沙汰に対して鈍くはないものの、あまり自覚はしていない。

「・・・ま、とりあえず先にいきますか」
「そうだな。で、どっちに行く?」
「ん~とね、こっち!」

進む彼らの上には、雲1つない空が広がっていた。

遅くなりました(汗) あと、次の話の出だしも書いたんでUPしときますv

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